意味がわかると考えさせられる話 意識不明

意味がわかると考えさせられる話 意識不明

長い夢だった。

目を開くと、白い天井が見えた。

白い壁に、風に揺れるカーテン。

機械音が聞こえてくる。

眩しいな。

視力が安定しない。

「!!目を覚ましたのね!」

「こ、ここは・・・どこ・・・ですか?」

声がうまく出せない上に、ずいぶんかすれていて、自分の声じゃないみたいだ。

「ここは病院。あなたは、交通事故に遭って、意識不明だったのよ。」

「んん・・・おれは・・・どうなって・・・」

「すぐ、先生を呼ぶね。待ってて。」

今の人は、ここの看護師か。

なんだか、涙ぐんでいるようだった。

声の調子から考えると、俺より年上かな。

四十代半ばくらいだろうか。

どこかで見たことある気がするんだよな。

眠っている俺の世話をしてくれていたから、記憶に残っているのだろうか。

そうだ。

妻と娘はどこだ?

思い出せない。

俺の記憶は、娘が小学校の卒業式で見せた笑顔と、妻が涙ぐんだ笑顔。

うーん、これ以上は思い出せない。

今は、少し休もう。

一時間ほど眠っただろうか。

目を覚ましてみると、そばには先ほどの年配女性が涙ながらにこちらを見ている。

その隣には、見覚えのある少女が座っていたのだ。

視力は頼りないままだが、俺にはその少女がすぐに分かった。

「ご・・・・め・・・・んな・・・」

精一杯声を出しても、俺の声はしわがれている。

多感な時期に、寂しい思いをさせてしまった。

父親が意識不明だなんて。

なんだか、少し背が伸びてないか?

顔立ち変わったように思える。

ただ、今の俺は、こうして家族に会えることに感謝した。

次の瞬間、入口のドア付近から、俺と同じようにしわがれた声が聞こえた。

しわがれているが涙ぐんだ女性の声だった。

「あなた、お帰りなさい!」

解説
おそらく「俺」は、30年ちょっとの間意識不明だったのだろう。
最初に出てきた40代半ばくらいの「俺」が看護師だと思っていた女性が、娘だと考えるとすべてに辻褄が合う。
小学校を卒業したばかりの娘が40代半ばになっているとなると、30年くらい眠っていたことになる。
「俺」が自分の娘だと思った少女は、孫なのだろう。
そして、最後に出てきたしわがれた声の女性こそが、奥さんだ。
きっと、もう70近いのかもしれない。
意味がわかるととても考えさせられるような話である。