意味がわかると怖い話 穴だらけの完全犯罪
腐れ縁だけで付き合っていた彼女を殺すことに決めた。
高校生時代から長いこと連れ添ってきた女。
最近、結婚しろとかウザいから。
ただ、気になるのは最近の警察が優秀なこと。
証拠残せば逮捕されそうだ。
俺には殺人は荷が重いか。
そんなときのこと。
昔の友達に呼ばれて、家を訪ねた。
Kという友達、今では人気推理作家としてそれなりに名の売れた存在だった。
高校生時代のKは根暗で、しょっちゅうイジメの対象にされていた。
まあ、いじめの主犯格は俺と彼女なんだけど(笑)
Kは、笑顔で俺を迎えてくれた。
昔の恨みは根に持っていないようだった。
最近、喧嘩でできてしまった俺の頬の大きな切り傷については何も聞いてこないK。
まあ、俺も聞かれない方が嬉しいんだけど。
一緒にお茶を飲みながら、語り合う。
話の内容は、Kの仕事についてがメイン。
俺が
「推理作家って、どういう風にストーリーを考えるの?」
と尋ねると、Kは
「今考えているのはさ、男が女を殺す小説さ。男は女を自分の家で刺し殺すんだ。で、その後{帰宅してみたら家に死体があります}と警察に通報するのさ。」
「でも、自分の家で殺すと、それこそ足が付くんじゃないのか。それに警察に通報するって。。。。」
「そこが、この犯人の緻密で頭の良いところなんだよ。警察も、犯人がそんな頭の悪い行動をとるとは思わないだろ?だから、男は容疑対象から真っ先に外れるのさ。」
「なるほどね。男が気を付けることは他にあるかい?完全犯罪を狙うとなると大変だろ。」
「例えばさ、凶器の包丁は近所のスーパーで堂々と買うことかな。顔を隠したりすれば、それこそ怪しい。 そして、凶器となる包丁にはしっかりと自分の指紋を残すことだね。それが一番警察をかく乱できるんだ。」
さすが、推理作家はレベルが違う。
俺は、その計画をそのままもらうことにして、彼女を殺すことを決心する。
Kの家からの帰り際、意味深にこう言ってみる。
「ありがとう。お前と話して、今日は気が晴れたよ。」
詳しい事情を何もわかってないKは、笑顔でこう返してくれる。
「こんなのが役に立って嬉しいよ。推理小説のネタを話しただけなのに。」
解説は下へ。
解説
高校時代にいじめられていたKの復讐なのだろう。
どうやってなのかは知らないが、「俺」と「彼女」の不仲を知ったK。
「俺」の性格から、おそらく「彼女」に殺意を持つと予想したのかもしれない。
ここまで犯人の捕まえやすい殺人トリックを信じ込ませ、「俺」を殺人罪で逮捕させ、「彼女」を殺すことにしたのだろう。
しかも、最後の一言が非常に怖い。
「推理小説のネタを話しただけ」のKが警察に捕まることはないのだ・・・・