そこは、天国へと続く道。
二人の女が話していた。
「あなたは、なんで死んじゃったの?」
「凍死したの」
「凍死ってつらい死に方だと聞くわ。つらかった?」
「そりゃ、つらいわよ。寒くて寒くて、指先や足先が痛くなるの。次に、体中の感覚が無くなっていくのよ。最後は、いつの間にか意識が飛んでしまっていたわ。あなたは、なんで死んだの?」
「心臓麻痺」
「心臓が悪かったの?」
「とくに、病気ではなかったはずよ。強いストレスがかかったんだと思う」
「ストレス?」
「実は、夫に浮気疑惑があってね。その日は、いつもより早くに帰宅したの。ベッドルームに行くと、裸の夫がいたわ。でも、女がいない。私は女がどこかに隠れてると思ったの。だから、家中を捜したわ。地下室に行っても女はいない。次は二階を調べたわ。二階にもいない。屋根裏まで見たの。そこにもいない。私にとって、浮気相手の女を捜すために、自宅を見て回るのが、かなりのストレスだったんだと思うわ。そのまま、心臓麻痺で死んでしまったの」
「そうだったのね。皮肉だわ」
「なにが?」
「あなたが最初に冷凍庫を捜していたら、私たちは死ななくて済んだかもしれない」
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解説
夫の妻と浮気相手が、天国へ続く道で顔を合わせてしまったという話。