さっきから口の中が痛い。
口を開けて鏡を見てみると、奥歯の辺りが真っ赤に腫れ上がっている。
どうやら、親知らずが腫れているようだ。
すぐに抜いたほうが良さそうである。
俺は自分の財布を開いてみた。
千円札が二枚と、小銭を集めてやっと三千円だ。
これが俺の全財産。
歯を抜くだけだ。十分に足りるだろう。
次の日、朝一番で歯科に行った。
受付で費用を尋ねると、薬代も含めて三千円はかかるという。
俺はごねた。こんなところで、全財産を失うわけにはいかない。
俺があまりに騒ぐものだから、奥から歯科医が出てきた。
「どうされたんですか」
「この受付が、親知らずを抜くのに三千円はかかるって言うんだ。歯を抜くだけだぞ。10分もかからないだろ。10分で三千円もかかるのは、おかしいって言ってるんだ」
歯科医はため息をついて言った。
「じゃあ、一時間かけて抜きましょう。さらに、麻酔を使わなければ費用も抑えられます。これでいいですね?」
散々ごねた俺は、その条件で手を打つしかなかった。
解説は下へ。
解説
麻酔なしで、一時間かけてゆっくり歯を抜く。
それは拷問に近い仕打ちである。